2019年秋に発売となった年差1秒のザ シチズン。言うまでもなく世界最高精度のクオーツ時計。電波やGPSを使うことによってより正確に時刻を表示する時計はすでにホームセンターにもあるくらいに多く存在しますが、自力で年差1秒の誤差を実現した技術はおおいに賞賛したいところ。
通常のクオーツより250倍もの振動を可能としたAT型水晶振動子をはじめ、1分ごとに温度による誤差を補正、より優れた加工精度の歯車に秒針のバックラッシュをおさえる独自の技術など、その造形においても搭載されるキャリバー0100は国産最高、いや世界最高のクオーツキャリバーと言ってもいいでしょう。精度においてはすでに高い技術力を示していたザ シチズン、今回は造形や趣向においてもセイコーの銘品9Fキャリバーを凌ぐものになったと言っていいかもしれない。
あとはデザイン。今のところオーソドックスなものに限られていますが、これからの発展には大いに期待したいし、必要だと思う。
電波時計やGPS時計がある中で、年差時計というのは趣味嗜好の逸品でしかない。
実用にこだわるなら1秒も狂わない電波時計やGPS時計の方が優れている。年差1秒と言っても両者には敵わない。あえてそこを年差時計として追及し技術を研鑽するのは、何世紀にも渡る時計技術の進歩がまだ終わっていないことを意味する。しかしそれを求めるのはその技術に浪漫を思える趣味人でしかない。だからこそより趣味嗜好の強いデザインの発展は求められるところだとは思うが、ことザ シチズンにおいては真面目一本で通してきたシチズンの頑なさも逆に応援したいと思うのは矛盾しているだろうか。
それにしても従来の年差5秒キャリバー搭載のチタンノーマルモデルが30万円代。キャリバー0100搭載のチタンモデルは80万円の上代。
差額を考えると
1秒の価値は約12万円となる。
この価格を高いとみるか安いとみるか、
趣味人の懐具合は如何に?
1995年の初代ザ シチズンを6万円で買ったものとしては今後の流れが楽しみでもある。