気まぐれ腕時計館

腕時計好きになって31年。貯めてきた戯論を気ままに書いています。

アガリのダイバーズウォッチ あとがき SBDC123

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セイコープロスペックス

Diver Scuba  SBDC123

ムーブメント   キャリバーNo6R35
駆動方式   メカニカル 自動巻(手巻つき)
精度    日差+25秒~-15秒
駆動期間   最大巻上時約70時間持続
石数  24石
機能   秒針停止機能
     カレンダー(日付)機能つき

ケース材質  ステンレス
ケースコーティング  ダイヤシールド
ケースサイズ
    厚さ:13.2mm
    横:42.7mm
    縦:46.6mm
ガラス材質  カーブサファイア
ガラスコーティング  内面無反射コーティング
重さ   180.0g

 

2010年代にセイコーはファースト、セカンド、サード、300mダイバーなど、ヘリテージダイバーを次々と復刻させました。

セカンドは、復刻シリーズの最後の方、2019年にSBDX031として1970年モデルをほぼ忠実にデザインして8Lキャリバーを搭載した高級モデル(発売当時定価45万円)として出され、その後に6Rを積んだ現代解釈モデルとしてSBDCシリーズが発売され現在も販売店に並んでいます。SBDC123は5500本限定の青文字盤モデルとなります。2020年モデルです。私は店頭在庫品を買いましたが、このブログを書いている2024年2月現在、ネットにも在庫があるようです。ただしISO改定適合前モデルですので3時位置に夜光がありません。1970年のオリジナルにもついていませんし私はこだわりませんが、こだわられる方はご注意ください。現在のダイバーズウォッチに関するISO6425適合では3時位置に夜光が必要です。

 

「アガリのダイバーズウォッチ」としSBDC123としましたが、その大きな理由の一つには前回までに書き記した植村さんのチャレンジ精神や人柄にほだされて、彼の生き様への憧れを腕時計に込めたと同時に、純粋にSBDCシリーズのセカンドダイバーが非常に優れていると感じたからです。

その理由を以下に書きます。

 

1.

まずはセイコーダイバーであること。

私はダイバーズウォッチが大好きです。

日常的に水を扱う機会が異常に多いということもあり高い防水性には拘りを持っています。

そして世にダイバーズウォッチは数えきれないほどあります。其々に特徴があり魅力的であります。

ですが、ダイバーズウォッチに最も必要なのは何でしょうか?私はズバリ、信頼性だと思います。

セイコーダイバーズは潜水プロフェッショナルの世界でも信頼を得ています。「命をかけるならセイコーダイバーを選べ!」と唱える職業ダイバーさんもおられました。実際にセイコーダイバーの進化はそういったプロフェッショナルの世界と共に進化しました。その意味では最高のセイコーダイバーは7Cクオーツを積んだツナ缶マリンマスター。これは本気で世界最高のダイバーズウォッチだと私は思います。ただ、あまりに潜水に特化したモデルですので普段使うのにはサイズも大きくシャツの袖には収まらないですし、デザインも古い観念からはオンタイムに使うには難があるかと思います。そして電池交換式クオーツなので定期的にメーカーでの電池交換が必要。メーカーで定期的に電池交換してもらうというのは安定した防水性能の維持にもつながりますから更に安心でもあります。とは言え少々面倒ではあります。もちろん、そんなの関係ないと思われる猛者もおられるとは思います。そのあたりは全くご自由に使っていただきたいですし、こうでないとならないという形式ばったことは普段の生活に腕時計そのものが必要かと問われる今の時代には無意味だと思います。

とりあえず、世界最高性能のダイバーズウォッチを製作しているセイコーが作るダイバーズウォッチは、普段使うにはどのモデルを選んでも信頼性において比類ないモデル群だと私は思います。

それならば、信頼できるダイバーズウォッチメーカーのしかも日常に使いやすいサイズとデザインのものが、たとえそれが最高性能の防水時計でなくても、毎日使う道具としてはより適しているのではないかなと私は考えます。

 

2.
次の理由ですが、6Rというムーブメント。
これ、色々と情報を見ていますが実は当たり外れはあるようです。ただし実用上困るような当たり外れではないです。私自身6Rダイバーを他に2本、4Rダイバーを1本所有していますが、すこぶる優秀な精度というわけではないですが取り立てて悪くもなく困ったことはありません。それに6Rも4Rも元はセイコー5に使われていたムーブメントの改良版です。セイコー5はセイコーが何十年も唯一途絶えずに作り続けた機械式時計です。それだけで信頼度は高く、そして何より安い。壊れても機械在庫は豊富なのでほぼ必ず直ると考えて良いでしょう。アガリの時計とするのに、必ず動くように直るというのは大きな要素です。

セイコーダイバーズには様々なムーブメントが搭載されています。

先に書いた電池交換式クオーツ、ソーラー電池クオーツ、スプリングドライブ、今はないですが自動巻き発電キネティックなどもありました。そして8Lを筆頭にした機械式群。8Lはもちろん良機であり、壊れても雫石工場がの意地でも直してくれるでしょう。しかしルーツがセイコー5である6Rや4Rならば、メーカーでなくてもいざとなれば、どうにか何処でも治してもらえる可能性が高いと言えます。私の知り合いに50年以上一つのセイコー5を使っている方がいてOVHしたのは10年前に私のススメで一度だけ。その方、精度はあまり気にされていませんが、私にはこの身近な事実が何より6Rや4Rに対する信頼性を高めているのです。何より安いというのもありがたいですね。ずっと前に書いたことがありますが、そもそもダイバーズウォッチはハードに使うことを想定された時計、高級品である必要があるでしょうか?

1970年代、セカンドダイバーやサードダイバーが好んで選ばれたのは安くて壊れないからというのが第一の理由だったと思います。その流れを引き継いでいるのが現在の6Rや4Rのモデルではないかなと思います。高級ダイバーも好きですが、気兼ねなく普段使いできる普及品ダイバーこそが日常的に寄り添ってくれる腕時計と言えるんじゃないかなと私は考えています。

 

3.

1993年から31年間、腕時計全般に興味を持って見てきて、それなりに自分の価値観は出来上がっています。細かい話にはなるのですが、アガリ時計認定の条件として、例えば植村さんなどのエピソード的思い入れ以外に、非常に重要視しているのが着け心地と時間の見易さです。どんなに凝った高級時計でもここが満たされないとずっと使い続けるのは無理です。

着け心地に関して言えば、重量は軽くはないですが、コマを腕周り16cmで調整して160gほど。割とゆったりめが好きなので腕周り16.5cmでも余裕で装着できる長さです。160gと聞くと「重い!」と思われるでしょうが、ダイバーズウォッチなら普通の重量でむしろ今時なら軽い方かもしれません。付属のシリコンラバーに交換すればかなり軽くなりますが、メタルブレスの方が付けたり外したりが楽なので私はメタルブレスのまま使用しています。そして着け心地は重量だけでは語れません。大事なのは重量バランスです。腕時計本体の厚み、そして重心の位置、重量を受け止める腕にフィットする面積、ブレスとのバランス、大きさ。特に大きさはケース径ではなくベルトを固定するラグからラグまでの大きさが重要で、1970年のオリジナルモデルSBDX031より若干小さなSBDC123(109も同様)は46.6mm。個人差があると思いますが、私の場合だとこの数字が50に収まるかどうかというところは非常に重要で50を超える時計はまずフィットしないし、着けてもはみ出しているようでカッコ悪いのです。46.6というのはちょうど良いサイズで、これがあまりに小さいと逆にダイバーズとしては格好いいとは言えなくなります。もちろんダイバーズでなければ小さくてもOKです。ブレスコマの稼働性も良好で、机上に置いた時にブレスが妙に歪まず普通に置けるのもお気に入りです。またケースなのですが、ブレスもそうですがダイヤシールドを使っています。傷がつきにくいように金属の表面加工を施してあるのですが、そのせいかどうか定かではないのですが、金属色がステンレス特有の白っぽさがなく若干チタンに近いような深みのあるグレーになっているのも隠れたお気に入り点です。

そして見易さなんですが、これは素晴らしいとしか言いようがないです。アナログ式(針式)腕時計には通常インデックスという目盛りがついています。腕時計の針がこの目盛りを指すことで時間を判別するわけですが、針がインデックスに届いているかどうか?つまりインデックスに届かないで寸足らずになっていないか?特に長針と秒針。ここは私的に重要ポイントで、インデックスにキチっと長針と秒針が届いていると非常に気持ちが良いのです。腕時計にそれほど興味なく私のページに来られた方(←そんな人は少ないとは思いますが…)は意外に思われるかもしれませんけれど、腕時計って案外と長針と秒針がインデックスに届いていないモデルが多いのです。実際、昔に所有していたロレックスサブマリーナ16610もそうでした。現行品は幾分マシになっているようです。高すぎますが…

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(⇧ほんの少しですが微妙に届いていない長針)

調べるとサブマリーナと双璧の高級ダイバーズであるオメガシーマスター↓もそうでした。

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ですが、SBDC123(109も同様)は絶妙に届いているのです。

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(SBDC123)

夜光が長針先の形状に合わせてセットしてあるのも何気にポイントが高いです。

視認性に関しては言う事なし。

これは本当に重要で針がインデックスに届いていないと時間を見るたびにストレスなのですが、逆に届いていますと小気味良いのです。

 

4.
青文字盤である事。

これはもう自分の好みだけの問題ですが、黒文字盤の腕時計も非常に沢山買ってきましたし持っていますが、腕時計に限った話ではないのですが基本的には色の中では青が1番好きなのです。

それと、まるっきり植村ダイバーというより自分らしさを好きな色でもって表現できるかなと思いました。そう、自分流の植村ダイバーズです。もちろん通常の黒モデルSBDC109も凄く良いと思います。SBDC109の方が絶対的に主流でしょう。

手に入れやすい価格とは言え10万円を超える(購入時定価16万5千円)ような高価な腕時計はもう買わないかなと思っていたのですが、たまたま他の時計の電池交換で寄った店頭でSBDC123を見つけてから、1週間頭からコレが離れず、今を逃せば2度と植村ダイバーの青文字盤は手に入らないのではないかと思うと、「もう買うしかない!」と、もう一度店に出向いた次第でした。

 

以上4つのポイントに分けてSBDC123を選んだ理由を書きましたが、コレだけではアガリ時計とした理由としてはもう一つ足りません。

最後にアガリ時計としたもう一つの理由を書きます。

 

「カメラ・写真が趣味の本筋になった。」


なぜ10万円を超える腕時計をもう買わないと考えていたかという最も大きな理由です。

10万円出すなら写真に投資したいというのが今の私の本音です。写真は趣味としてとても素晴らしいと思います。

何故かというお話は他所で沢山していますので、このページでは割愛します。

 

本当に長年、腕時計という趣味をやってきました。しかしそもそも腕時計が趣味というのは何なのか?これは腕時計を趣味としながらも同時に疑問に思っていた事でした。初期の頃は腕時計を分解組み立てなどして技術者ぶってみたりしたこともあったけれど、それを続けるのはちょっと違うなと。では買い集める事なのか?いや…結果として普通では考えられないほど多くの腕時計を買ってきたけれど、本当は沢山欲しかったわけではない。起源を辿れば、たった一本の腕時計をトコトン愛用することが目的で、その意図に合った時計を探してるうちに気がついたら沢山買っていたという本末転倒。しかし、今SBDC123と出会えたことで、本来の目的を果たせる可能性が出てきたかもしれないということ。だけど今となっては長年付き合ってきてる相棒と呼ぶに相応しい腕時計たちも居る。オメガスピードマスターにブライトリング ナビタイマー、IWCのインヂュニアにジャガールクルト のレベルソ、これらはとても大切な思い出と共に私の日常の時を刻んでくれています。最後まで手放すことのない一生物。それとは別のカテゴリーで私にはG-SHOCKセイコーダイバーが存在しています。(G-SHOCKの用途は言うまでもないですが、これもアガリの結論は出ているのでパワーがあればいずれ書き残したいと思います。)

先に書きましたがダイバーズウォッチという分野でセイコーダイバー以上に信頼できるダイバーズは無いと私は考えています。なのでベストを選んでみたかった。

そして7Cのクオーツモデルも買って、ダイバーズでは無いけれどダイバーズのようなキネティックモデルも買って、8Lモデルも買って、6Rや4Rモデルも他に買ってきて、スプリングドライブは買ってないけれど(すみません、個人的にSDにはあまり興味がない…)総合的な結論として私にとって真のダイバーズは即ちセイコーダイバーズなので、今、SBDC123をアガリのダイバーズウォッチとしました。

とは言え、人生はまだまだ続く(予定)なので何がどう変わるかわかりません。予定通りいかないのもまた人生。用意周到に準備して計画しても、予期せぬことは起こるもの。何事も。でもそんな時でもSBDC123を腕につけていれば、なんとか乗り切れるんじゃないかな。

そんな気にさせてくれる腕時計と出会えて手に入れた事を心から悦びたいと思っています。

欲しかったあのカメラのレンズを先送りにしてでも…

 

(おわり)